京都地方裁判所 昭和４１年（わ）１８４号 判決
本籍
韓国慶尚南道晋陽郡大谷面丹牧里九三二
住居
京都市北区大宮榿ノ木町二五番地
会社役員
河村建次こと
河京完
大正一四年七月二〇日生
本店所在地
京都市下京区西条小橋東入橋本町一〇五番地
東洋実業
株式会社
右代表取締役
河京完
右河京完に対する所得税法および法人税法各違反被告事件、右東洋実業株式会社に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官中鶴聳出席のうえ審理して、次のとおり判決する。
主文
被告人河京完を懲役一年四月および罰金二、〇〇〇万円に、被告人東洋実業株式会社を罰金四五〇万円に処する。被告人河京完において右罰金を完納することができないときは金三万二〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
被告人河京完に対しこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用のうち証人森田琢磨、同金漢秀、同東原八千代、同高橋一男、同三内哲朗、同津田市次郎に支給した分は被告人河京完の、証人三木政親、同永井熊雄に支給した分はその二分の一ずつを被告人河京完、同東洋実業株式会社の負担とする。
理由
（罪となるべき事実）
第一 被告人河京完は、昭和三二年一〇月頃、京都市中京区丸太町西洞院東入梅原町一一六番地にパチンコ店府庁前「モナコ会館」を開店し、以後順次営業を拡張して同三八年末までの間に府庁前店（同三九年廃店）、石山店、敦賀店、神戸店、大和高田店、堺店（同三九年廃店）、長浜店、武生店、小松店、鯖江店、新潟高田店、直江津店、笠岡店の一三店を経営し、同三八年一二月下旬までは右府庁前パチンコ店に、それ以後は京都市下京区四条小橋東入橋本町一〇五番地東洋実業株式会社内に本部事務所を置き、右業務一切を統轄掌理していたものであるが、所得税を逋脱しようと企て
（一） 被告人河京完の昭和三七年度における実際の所得税の総所得金額は六九、二二二、二七三円でこれに対する所得税額は四二、五九二、九一〇円であったにもかかわらず、銀行預金を仮空名義としたり、不動産の取得価格を実際よりも圧縮して資産に計上したりする等の不正の方法によりその所得を秘匿したうえ、同三八年三月二日同市中京区内中京税務署において、同税務署長に対し同被告人の同三七年度における総所得金額は一二、九四一、一三七円でこれに対する所得税額は五、六〇五、三五〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって詐偽その他不正の行為により右正当な税額との差額である所得税三六、九八七、五六〇円を逋脱し
（二） 同被告人の昭和三八年度における実際の所得税の総所得金額は八四、六〇四、一五二円でこれに対する所得税額は五四、〇七八、七八〇円であったにもかかわらず前同様の不正の方法によりその所得を秘匿したうえ、同三九年三月二日京都市上京区内上京税務署において、同税務署長に対し、同被告人の同三八年度における総所得金額は一七、〇一〇、〇〇〇円でこれに対する所得税額は七、八〇四、一二〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって詐偽その他不正の行為により右正当な税額と右申告税額との差額である所得税四六、二七四、六六〇円を逋脱し
（三） 同被告人の昭和三九年度における実際の総所得金額は七三、二二七、〇九一円でこれに対する所得税額は四三、二一六、四四〇円であったにもかかわらず前同様の不正の方法によりその所得を秘匿したうえ、同四〇年三月一二日前記上京税務署において、同税務署長に対し、同被告人の同三九年度における総所得金額は二九、六〇九、五三一円でこれに対する所得税額は一四、九〇八、二七〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって詐偽その他不正の行為により右正当な税額と右申告税額との差額である所得税二八、三〇八、一七〇円を逋脱し
第二 被告人東洋実業株式会社は京都市下京区四条小橋東入橋本町一〇五番地に本店を置き遊技場の経営を営むもの、被告人河京完は被告人会社の代表取締役でその業務一切を統轄掌理しているものであるが、被告人河京完は被告人会社の業務に関し法人税を逋脱しようと企て
（一） 被告人会社の昭和三八年九月一日より同三九年八月三一日までの事業年度における実際の法人税の所得金額は二二、七九二、五九七円でこれに対する法人税額は八、五一一、一五〇円であったにもかかわらず、公表帳簿上売上の一部を除外する等の不正の方法によりその所得を秘匿したうえ、同三九年一〇月三〇日京都市下京区内下京税務署において、同税務署長に対し被告人会社の右事業年度における所得金額は二二二、二九七円でこれに対する法人税額は七三、三二〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって詐欺その他不正の行為により右正当な税額と右申告税額との差額である法人税八、四三七、八三〇円を逋脱し
（二） 被告人会社の昭和三九年九月一日より同四〇年八月三一日までの事業年度における実際の法人税の所得金額は三〇、四九一、五八〇円でこれに対する法人税額は一一、一〇一、八五〇円であったにもかかわらず、前同様の不正の方法によりその所得を秘匿したうえ、同四〇年一〇月三〇日前記下京税務署において、同税務署長に対し、被告人会社の右事業年度における所得金額は九一七、〇四〇円でこれに対する法人税額は二八四、二七〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって詐欺その他不正の行為により右正当な税額と右申告税額との差額である法人税一〇、八一七、五八〇円を逋脱し
たものである。
（証拠の標目）
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 押収してあるノート一冊（昭和四七年押第二三八号符号四）、ボーナス関係綴一綴（同符号五）、元帳一冊（同符号一一）
判示第一の各事実につき
一 被告人の検察官に対する供述調書三通（検甲第一三九、一四〇、一四一号）
一 国税査察官作成の犯則所得証拠説明書および付表
一 大蔵事務官作成の告発書類（調査書類その一）、同（銀行調査書類）、同（調査元帳）
一 検察事務官作成の「所得税確定申告書写作成について」と題する書面
一 被告人作成の上申書
一 証人三神元迪、同津田市次郎、同三内哲朗の当公判廷における各供述
一 第一一回公判調書中の証人森田琢磨の、第一五回公判調書中の同李文子の、第一九回公判調書中の同金漢秀の各供述記載
一 当裁判所の証人東原八千代、同疋田哲雄に対する各証人尋問調書
一 稲村久直、三内哲朗、三神元迪、新木維斗、高橋一男、金漢秀、永井熊雄（二通、検甲第一三三、一三四号）、渡辺禧男、津田市次郎の検察官に対する各供述調書
一 木村良之助、中瀬成明、高城妙子（二通、検甲第一一三、一一四号）、小林信子、新木維斗、福田昌市、副島美千代、川瀬孝吉、松田岩雄、中田静江、金和新一の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 文室善雄、田辺伝作成の各供述書
一 京洛日産モーター株式会社総務部次長山根要次郎、衣川金造、株式会社松波硝子店代表取締役松波省次郎作成の各確認書
一 大蔵事務官作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書一通（検甲一〇四の二）
一 押収してある総勘定元帳一冊（昭和四七年第二三八号符号七）、仕訳伝票九冊（同符号八）、賃金台帳一綴（同符号一九）、各店別給料台帳三綴（同符号二二）、商品出納帳一冊（同符号二六）、神戸店契約関係書類五通（符号二七）、パチンコ機械明細表二冊（同符号三〇）、頼母子帳一冊（同符号四三）、手形受払帳一冊（同符号四四）、建物賃貸借契約証書二綴（同符号四五）賃貸借契約書三通（同符号五一）、賃貸借契約書二通（同符号五二）、自動車売買契約書二綴（同符号五四）、領収書、請求書一綴（同符号五九）、丸正工務店関係書類一綴（同符号六〇）、近藤工務店関係書類（同符号六一）、直江津関係書類一綴（同符号六五）、信用調査書一冊（同符号六七）、貸付禀議書四綴（同符号七八）、担保物件目録二葉（同符号七九）
判示第一（一）、（二）の各事実につき
一 内藤義三、浅田儀太郎、藤木粂吉、粟津新三、沢井瀞、金東煥の検察官に対する各供述調書
一 浅田儀太郎の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 近藤陽作成の確認書
一 押収してある不動産売買契約書六通（昭和四七年押第二三八号符号一二ないし一七）
判示第一（一）、（三）の各事実につき
一 杉山幸男の大蔵事務官に対する質問てん末書
判示第一（一）の事実につき
一 船木正文、松田実、内田育造、杉山幸男の検察官に対する各供述調書
一 三宅藤四郎、吉岡喜久代の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 内田育造、大島義雄作成の各供述書
一 吉岡喜久代、篠原孝夫作成の各確認書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算報告書（検甲第二九号）
一 押収してある売買契約書一綴（昭和四七年押第二三八号符号四六）、売買契約書四通（同符号四七ないし五〇）、長浜工事領収書一綴（同符号五八）、よしおか工務店領収書一綴（同符号六二）、領収書一枚（同符号六三）、木材関係領収書一綴（同符号六六）、平和関係書類一綴（同符号七二）
判示第一（二）、（三）の各事実につき
一 岸敏朗、島津圭一作成の各確認書
一 板木武将作成の供述書
一 押収してある賃金台帳（店別、昭和四七年押第二三八号符号二〇）、給料計算書（同符号二一）、請求書領収書等一綴（同符号二三）、領収書一綴（同符号三四）、退職者給与支払明細書一綴（同符号三六）、三八年度請求書綴一六綴（同符号三八）、領収書一綴（同符号六四）、藤原電機工事関係書類一綴（同符号七〇）、ニューキン関係書類（同符号七一）、承認申請書一綴（同符号七七）、各店支払明細表一冊（同符号八七）
判示第一（二）の事実につき
一 下嘉造、築紫善治郎、小笠原宗平作成の各確認書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書（検甲第三〇号）
一 押収してある請求書綴三綴（昭和四七年押第二三八号符号八）、請求書綴四綴（同符号二四）、モナコセンター建設費関係書類一綴（同符号二九）、三八年度モナコ会館総勘定元帳（同符号三一）、不動産関係書類一綴（同符号五六）、大正エレベーター関係書類一綴（同符号六七）、定期預金満期別管理表一綴（同符号七五）、手帳一冊（同符号八二）
判示第一（三）の事実につき
一 山本米男、斉藤潤吉、畑山三郎、幸田幸典、中山信三、藤修、松田岩雄、渡辺禧男（検甲第一三五号）の検察官に対する各供述調書
一 藤修作成の上申書
一 藤原正一、若森美智子作成の各確認書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算報告書（検甲第三一号）
一 押収してある金銭出納帳二冊（昭和四七年押第二三八号符号九）、賃金台帳綴一綴（同符号一八）、商品出入表綴一一綴（同符号二五）、請求書三九年分一綴（同符号二八）、領収書等一綴（同符号三二）、売買契約書一通（同符号三五）、退職者給与計算書（同符号三七）、手帳一冊（同符号三九）、領収書一枚（同符号四一）、閲覧書等一綴（同符号四二）、土地売買契約書（同符号五三）、不動産売買契約書（同符号五五）、手帳一冊（同符号七四）、普通預金通帳三冊（同符号八〇）、普通預金通帳一冊（同符号八四）、普通預金通帳二冊（同符号八五）、出資金領収書二枚（同符号八六）、仕訳伝票一二綴（同符号九二）、普通預金通帳一冊（同符号九三）、モナコ堺見積書及び契約書一綴（同符号九四）
判示第二の各事実につき
一 被告人河京完の検察官に対する供述調書（検甲第二四号）
一 第九回公判調書中の証人三木政親の、第一三回公判調書中の同永井熊雄の各供述記載
一 永井熊雄（検甲第一八号）、伊仁述、河万の検察官に対する各供述調書
一 渡辺禧男の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 永井熊雄作成の確認書
一 登記官作成の会社登記簿謄本（検甲第一四四号）
一 河村建次作成の証明書（検甲第二号）
一 大蔵事務官作成の告発書（検甲第一号）
判示第二（一）の事実につき
一 東洋実業株式会社作成の自昭和三八年九月一日至同三九年八月三一日事業年度の法人税確定申告書控および同事業年度の決算報告書写
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書（検甲第七号）
一 押収してある売上関係メモ綴一綴（昭和四七年押第二三八号符号一）
判示第二（二）の事実につき
一 大蔵事務官作成の証明書（検甲第一一号）および脱税額計算書（検甲第一二号）
一 押収してある日報綴一綴（昭和四七年押第二三八号符号三）、昭和三九年度夏季賞与支給関係書類（同符号六）
（法令の適用）
第一被告人河京完
一 判示各事実
（一） 判示第一（一）、（二）、（三）の各事実につき
所得税法（昭和四〇年三月三一日法律第三三号）附則第三五条、（旧）所得税法（昭和二二年三月三一日法律第二七号）第六九条（いずれも懲役刑と罰金刑を併科）
（二） 判示第二（一）の事実につき
法人税法（昭和四〇年三月三一日法律第三四号）附則第一九条、（旧）法人税法（昭和二二年三月三一日法律第二八号）第四八条（懲役刑と罰金刑を併科）
（三） 判示第二（二）の事実
法人税法（昭和四〇年三月三一日法律第三四号）第一五九条（懲役刑と罰金刑を併料）
二 併合罪 刑法第四五条前段
懲役刑と罰金刑の併科 刑法第四八条第一項
懲役刑につき 刑法第四七条本文、第一〇条（犯情の最も重い判示第一（二）の罪の刑に加重）
罰金刑につき 刑法第四八条第二項
三 罰金完納不能の場合の労役場留置 刑法第一八条
四 執行猶予（懲役刑につき） 刑法第二五条第一項
五 訴訟費用の負担 刑事訴訟法第一八一条第一項本文
第二被告人東洋実業株式会社
一 判示各事実
（一） 判示第二（一）の事実
法人税法（昭和四〇年三月三一日法律第三四号）附則第一九条、（旧）法人税法（昭和二二年三月三一日法律第二八号）、第四八条、第五一条第一項
（二） 判示第二（二）の事実
法人税法（昭和四〇年三月三一日法律第三四号）第一五九条、第一六四条第一項
二 併合罪 刑法第四五条前段、第四八条第二項
三 訴訟費用の負担 刑事訴訟法第一八一条第一項本文
よって主文のとおり判決する。
（裁判官 長谷喜仁）